ほとんどの人が一生に一度は着ることになる喪服ですが、じつは誤った着こなしをしているケースがあります。

本記事では弔事の際の正しい服装選びから、注意すべきマナーについて詳しく解説します。人との別れは突然やってくることも多いため、もしもの時に備えてしっかり確認しておきましょう。

喪服が必要なシーン

喪服は通夜・葬儀・法事といった、亡くなった人を送り出すための一連の儀式で使用します。各シーンの時期や目的については、以下の表を参考にしてください。

シーン	時期	目的
通夜	亡くなった翌日	親族や近しい人が集まり、故人と最後の夜を過ごし冥福を祈る
葬儀	通夜の翌日	宗教的な儀式により故人を弔い、送り出す
法事	命日など節目の日	節目に故人を供養する

亡くなった方が身内の場合は、通夜・葬儀・法事すべてに出席するのが一般的です。一方、知人など関係性が薄い場合は、通夜か葬儀のどちらかのみ参列するケースが多いでしょう。

格式ごとの喪服の種類

喪服には 正喪服・準喪服・略喪服 の3種類があり、参列する立場や場面によって適切な服装を選ぶ必要があります。格式を誤ると失礼にあたるため、以下の表でそれぞれの違いを理解しておきましょう。

正喪服

正喪服（せいもふく） は、葬儀や告別式などで喪主・遺族・近親者が着用する最も格式の高い服装です。男女ともに和装と洋装がありますが、最近では洋装（スーツタイプ）が主流となっています。

男性	モーニングコート（昼間）ブラックスーツ（夜間）紋付羽織袴
女性	ワンピースセットアップ黒紋付の着物

喪服のカラーはたいてい黒無地ですが、モーニングコートに限っては黒とグレーのストライプ柄のコールパンツを着用します。なお、モーニングコートはその名の通り昼間に着用するもののため、夜間に葬儀や告別式を行う場合はブラックスーツを選びましょう。

準喪服

準喪服は葬儀や通夜に訪れる一般参列者が着用する喪服です。親族以外での弔事には準喪服を使用するため、社会人にとって必需品のアイテムともいえるでしょう。

男性はブラックスーツ、女性はブラックフォーマルスーツやワンピースが準喪服にあたります。正喪服とは異なり、和装タイプはありません。

略喪服

略喪服は、急な弔問や仮通夜に参列する際に使用する服装です。ダークグレーやダークネイビーなど暗めの色合いのスーツ（女性はワンピースでも可）であれば問題ありません。

正喪服や準喪服に比べるとややカジュアルではありますが、派手な装飾やダークカラー以外のものはマナー違反となるため避けましょう。

喪服着用時に必要なアイテム

弔事の際には、喪服だけではなく身の回りのアイテムにも気を配る必要があります。ワイシャツ・靴・コートなど、いざという時すぐに用意できないものもあるため、事前の準備を怠らないようにしましょう。

ワイシャツ

モーニングコートやブラックスーツ着用時に使用するワイシャツは、白無地で光沢が無いものを選びましょう。一見白無地に見えても、織柄やワンポイントが付いているものは不適切です。

また、ボタンダウンシャツはカジュアルすぎる印象を与えるため、弔事の際には避けてください。同様の理由から襟が大きく広がっているワイドカラーや、襟が短いショートカラーのワイシャツも避けましょう。

ネクタイ

ネクタイの色は黒無地が基本です。光沢のあるものや柄入りのものは避け、シンプルで落ち着いたデザインのものを選びましょう。

ワイシャツと同じく光沢のあるものは適しません。ただし、シルクは多少光沢があっても天然素材ならではの品があるため、喪服に合わせても問題ありません。

正喪服に合わせるのならシルク、準喪服などに合わせるなら安価かつマットな質感のポリエステル素材がおすすめです。

コート

寒い季節に弔事に参列する場合、屋外ではコートを着用しても構いません。ただし場の雰囲気を損なわないよう、こちらも光沢の無い黒無地のものを選びましょう。黒無地が無い場合、濃紺やダークグレーなど暗めの色合いのものでも代用可能です。

ウールやカシミヤ素材のコートは防寒性に優れており、重厚感もあるので喪服の上に羽織るのに適しています。反対にカジュアルすぎるダウンジャケットやナイロン素材のもの、殺生を連想させる毛皮・ムートンを使用したものは不適切です。

靴

喪服着用時の靴は、上品かつ適度な光沢がある本革もしくは合成皮革の革靴を選ぶのが基本です。黒無地で、シンプルなデザインのものを選びましょう。エナメル素材は光沢が強く、布はカジュアルすぎるため避けてください。また、靴のデザインにも注意が必要です。革靴であっても装飾があるスワールモカ、つま先が見えるオープントゥタイプは弔事の場には派手な印象を与えるため不向きです。

喪服に合わせるのなら、以下のタイプを選びましょう。

男性	プレーントゥストレートチップ
女性	ラウンドトゥスクエアトゥ

なお、革製品は放っておくとカビやほこりで汚れてしまうため、普段から定期的にケアしておくことも大切なポイントです。

バッグ

バッグは黒無地で、シンプルなフォーマルタイプが最適です。ブランドロゴや金具が目立つもの、リュックやトートバッグタイプのものは避けましょう。

素材は布タイプがベストです。革は殺生を想起させることから本来は不可でしたが、最近では「目立たなければ革でも可」とする傾向があります。ただし、クロコダイルやオーストリッチのようなあからさまな素材は現代でもNGとされています。

小物

葬儀屋法事は長時間になることもあるため、実用性やマナーを考慮した小物を準備しておくことも大切です。具体的には、以下の表に記載したものを用意しておきましょう。

種類	選び方のポイント
ハンカチ	白または黒の無地を選ぶ刺しゅうやレースが付いた派手なものは避ける
靴下	男性：黒のロングソックス女性：黒のストッキング
袱紗	黒・紫・グレーなどの寒色系を選ぶ柄は無地が基本だが、名前や家紋なら可
数珠	男女で主玉のサイズが変わるため、使用者の性別に合わせる急な弔事や宗派にこだわりが無い場合は略式数珠でOK宗派にこだわる場合は本式数珠を用意する

スマホを持ち運ぶケースも多いですが、必ず電源を切り使用時以外はバッグの中に入れておくのがマナーです。

喪服着用時の注意点

弔事に列席する際には、服装だけではなく細かな身だしなみにも気を配ることが大切です。意外と知らない人が多い喪服着用時の注意点について、詳しく見ていきましょう。

体型に合う喪服を選ぶ

喪服は体より大きすぎるとだらしなく見え、小さすぎると窮屈で動きづらくなるため、体型に合う喪服を選びましょう。そのためには、店舗で一度採寸をしてもらいましょう。既製品を購入する場合、採寸結果を踏まえ体に一番近いサイズを選ぶことになります。

既製品でピッタリなものが見つからない場合や、品質の高い喪服を用意したい場合は、オーダースーツ専門店に依頼するのも手です。オーダーメイドなら体型に合わせた仕立てが可能なため、より洗練された印象を与えられます。肩幅の広さやウエストの太さが気になる人も、専門店に一度相談してみると良いでしょう。

黒色で統一する

喪服着用時は、ネクタイや靴下などの小物も含め黒色で統一するのがマナーです。ハンカチなどの小さなものでも、白や柄物は避けましょう。

また、黒と一言でいっても素材や染め方などで色味が少し異なって見える点にも注意が必要です。微妙に色合いが異なる黒が混ざると不自然な印象になるため、できるだけ同じメーカーのセットで揃えましょう。

派手なメイクやヘアアレンジをしない

派手なメイクやヘアアレンジも弔事の場には不適切です。濃いリップや派手なアイシャドウは避け、ナチュラルメイクに抑えましょう。

髪の毛が長い場合は1本に束ねるか、お団子にしてまとめておきます。編み込みやパーマ、夜会巻きは派手な印象を与えるため不向きです。まとめ髪が難しい長さの場合は、サイドの髪が顔にかからないよう、目立たないヘアピンで止めておいてください。

ネイルは極力落とす

ネイルは基本的に不可のため、極力落として参列しましょう。ただし、ジェルネイルを施している場合はすぐに落とせないケースもあります。ネイルカラーは明るい場合は、上からベージュ系など落ち着いた色味のネイルを重ねて、もとのカラーが目立たないようにしてください。

アクセサリーは付けない

基本的にアクセサリーは控えるのがマナーですが、結婚指輪と真珠の一連ネックレスについては身に付けていても構いません。ただし、真珠のネックレスでも二連のタイプは「不幸が重なる」とも受け取れて縁起が悪いということから、避けるのがマナーです。

まとめ

喪服を着用する際は黒を基調に、シンプルで落ち着いた装いをしましょう。派手なメイクやヘアスタイルは避け、全体的に控えめな身だしなみに整えてください。

「弔事に関するものを事前に準備するのは縁起が悪い」と考える人もいますが、いざという時に慌てないためにも、必要なものを揃えておくことが大切です。故人や遺族へ失礼のないよう、弔事のマナーを踏まえた準備を心がけましょう。