香典は、故人を偲び遺族に哀悼の意を伝えるための大切な習慣です。しかし、香典の相場や包み方、のし袋の種類、表書きの書き方など細かなマナーが多く、戸惑う人も少なくありません。
本記事では、故人との関係別の金額相場、香典袋の選び方と書き方、そして正しい渡し方のマナーを詳しく解説します。
香典の相場

結婚式のご祝儀と同様に、香典にも故人との関係によって適切な金額があります。適切な金額を知り、遺族に対して失礼のない形で包むことが重要です。
近親者への香典の相場
親や兄弟姉妹の場合、香典の相場は「5万円~10万円」となります。地域や家族の慣習により異なるため、事前に親族間で確認するとよいでしょう。特に、家族葬などの場合は、他の親族の意向に合わせることが重要です。
故人と特に親しい関係にあった場合、10万円以上を包むこともありますが、無理のない範囲で金額を決めることが大切です。
親族・親しい親戚への香典の相場
叔父・叔母、いとこなどの親族には「1万円~5万円」が一般的です。関係が近い場合や特別な付き合いがある場合は、3万円以上包むこともあります。
親族内で統一した金額を決めることもあるため、事前に確認するとスムーズです。地域の慣習によっても異なるため、親族と相談しながら決めるのが望ましいです。
友人・知人・職場関係者への香典の相場
友人や同僚への香典の相場は「3,000円~1万円」です。特に親しい友人なら1万円を包むのが一般的です。会社で香典をまとめる場合は、1人あたり3,000円~5,000円を目安にし、代表者がまとめて渡すケースもあります。
直属の上司や部下の場合、より多めに包むこともありますが、会社の慣習に従うことが大切です。
香典袋の種類と包み方

香典袋は、宗派や金額によって適切なものを選ぶ必要があります。また、香典の包み方も重要なポイントです。
のし袋の種類と選び方
香典袋には種類があり、水引のデザインや表書きが異なります。仏式では「結び切り」の黒白または双銀の水引を使用し、神式では白黒または双銀の水引を選びます。キリスト教式では水引を使用せず、ユリや十字架のデザインが入ったものが適しています。
包む金額によって香典袋のデザインが異なり、1万円程度ならシンプルなもの、5万円以上なら厚みのあるしっかりしたデザインのものを選ぶのが適切です。
お札の向きと包み方
香典に入れるお札は「新札は避ける」のがマナーです。これは「突然の出来事に備えていた」と解釈されるため、あえて少し折れたお札を使うのが礼儀とされています。
お札の向きは、肖像画が裏側になるように入れるのが基本です。中袋に入れる際も、向きや折り方を間違えないよう注意しましょう。
表書きの書き方と注意点

香典の表書きには、正しい筆記具を使用し、マナーを守って書くことが重要です。特に、弔事ならではのルールを意識して、丁寧に仕上げましょう。
毛筆・筆ペンの選び方
香典の表書きは、毛筆や筆ペンを使用し、濃墨で書くのが正式なマナーです。弔事では「薄墨」も使用されますが、これは涙で墨がにじんでしまったことを表す意味があり、相手に対する深い弔意を示します。筆ペンには「濃墨」と「薄墨」の2種類があるため、香典用には薄墨を選ぶとより適切です。
書く際は、楷書で丁寧に記載し、略字は使わないようにしましょう。また、書き損じた場合、修正ペンを使用せず、新しい袋に書き直すのがマナーです。
連名で香典を渡す場合の書き方
夫婦やグループで香典を出す場合、代表者の名前を中央に書き、連名の場合は右側が目上、左側が目下になります。3名以上の連名の場合は「○○一同」と記載し、中袋に全員の名前を記載するのが一般的です。
職場の同僚や友人グループでまとめる場合は、同封するリストに氏名を記入すると、遺族にとってもわかりやすくなります。
香典の渡し方とマナー
香典を渡す際は、ただ受付に渡すだけでなく、正式な作法を守ることで、より丁寧な印象を与えることができます。持参方法や渡すタイミングにも注意しましょう。
渡すタイミングと挨拶の仕方
香典は通夜または葬儀・告別式の受付で渡します。その際、「このたびはご愁傷様です」といった弔意の言葉を添えるのがマナーです。神式では「安らかにお眠りください」、キリスト教式では「お悔やみ申し上げます」と言うのが適切です。
新札を避けると同様に、香典を遺族に直接手渡しすることも控えましょう。正式な場では、受付で芳名帳に記名したうえで渡すのが一般的です。
袱紗(ふくさ)の使い方
香典袋は直接バッグやポケットから取り出すのではなく、袱紗(ふくさ)に包んで持参するのが正式なマナーです。袱紗は、紫色が慶弔どちらにも使えるため便利ですが、弔事専用として「紺・グレー・緑」などの落ち着いた色のものを使用するのが一般的です。
受付で渡す際は、袱紗の上に香典を置き、相手に正面が向くようにして両手で丁寧に差し出します。また、弔事の場合は「結び目が下になるように包む」ことを意識しましょう。
まとめ
香典の準備や渡し方には細かいマナーがありますが、正しい知識を身につけることで、遺族に対して丁寧な弔意を示すことができます。特に、相場や表書きのルールを理解し、適切な香典袋を選ぶことで、形式を重んじた弔意を伝えられます。香典を渡す際は、受付での言葉遣いや渡し方にも気を配り、落ち着いた態度で対応しましょう。故人を偲ぶ気持ちを大切にし、適切な形式で香典を用意することが、遺族に対する最大の配慮となります。